サラマンドラの水槽

μία γὰρ χελιδὼν ἔαρ οὐ ποιεῖ, οὐδὲ μία ἡμέρα. (Arist. EN. 1098a18-19)

アンセルムスについてのお勉強


「神」という謎―宗教哲学入門 (SEKAISHISO SEMINAR)

「神」という謎―宗教哲学入門 (SEKAISHISO SEMINAR)


ふと思い立ってアンセルムスについて色々漁っていたら、半年ほど前に読んだはずのこの本に行き当たりました。
第9章がアンセルムスによる神の存在論的論証にあてられています。

『プロスロギオン』第2章で、アンセルムスは神の存在を論証するため、帰謬法に訴えます。

プロスロギオン (岩波文庫)

プロスロギオン (岩波文庫)


著者によれば、この論証は以下の形式をとります。(pp. 194-195)

【定義】
「神」(以下G)=「それ以上大きいものが考えられないこと」

【証明】
1.Gは現実に存在しないと仮定する。
2.Gという言葉を聞いて、それを理解する人のあたまの中には、Gが存在する。
3.「Gが現実に存在する」と考えることができる。
4.現実に存在することは、あたまの中だけに存在することよりも大きい。
5.Gよりも大きいものを考えることができる。(2,3,4より)
6.5は矛盾
7.ゆえに、1の仮定は誤り。
8.ゆえに、Gは現実に存在する。

この論証について、著者は様々な角度から分析していきます。
「神」の定義はこの論証で使用されているものでいいのか、この論証の「存在」の用法はどう考えればいいのか。
詳しい内容は読んでいただくとして、本書に共通する特徴として、論理の明晰さに由来する読みやすさがあります。
この章以外にも面白いところはありますので、ぜひご一読ください。


しかし、私が関心を持っているのはアンセルムスの真理論なのでした……。