『論理学の発展』第1章
- 作者: William Kneale,Martha Kneale
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand
- 発売日: 1985/05/23
- メディア: ペーパーバック
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論理学史の古典の第1章です。
訳語等間違っている部分がある可能性大です。
論理学における「証明」には、真なる前提と妥当なアーギュメントが必要です。
そのアーギュメントには、アリストテレスによれば、論証的アーギュメントと弁証術的アーギュメントという、二種類のアーギュメントが存在します。論証的アーギュメントは真なる前提から真なる結論が必然的に導き出されるものですが、弁証術的アーギュメントでは前提が真であるとは限らず、結果的に結論が真であるとも言えません。
ここで、証明が探求され要求される三つの場面が区別されます。
①純粋数学――抽象的でア・プリオリな真理
②形而上学――世界の構造についての一般命題
③日常(e.g. 政治)――偶然命題
このうちの①こそ、論証的アーギュメントへの答えとなるものです。ここから古代ギリシアの幾何学へと議論は進み、そこで注意することもまた四つに分けられます。
1.幾何学の命題は〈種〉についての普遍的命題であること。
2.普遍的命題のうちでも、幾何学の場合は「必然的に真であるような命題」を扱うということ。
3.必然的に真である普遍的な命題のうちでも、「定義」に特別な注意を払わなければならないということ。
4.一般規則への包摂。
このいずれも後にアリストテレスによって詳細に探求されることになるということを考えるのであれば、論理学の始まりと幾何学との関係が深いことが理解されるでしょう。論理学の考察の中に幾何学は大きな位置を示しています。
さて、このような論証的アーギュメントだけではなく、ギリシアの論理学を考えるうえでは弁証術的アーギュメントも重要です。弁証術の歴史をたどると登場するreductio ad impossibleはエレアのゼノンに由来します。好ましくない帰結を生み出すような議論方法はソクラテスの十八番だったことを考えれば、「弁証術」という語の最初の意味もまた、形而上学におけるreductio ad impossibleであったということができます。
最後に、論理学の哲学へのプラトンの寄与が考察されます。論理学の本性についての重要な問いは以下の三つです。
(1)真や偽であると考えられるものは何か。
(2)妥当な推論を可能にするのはいかなる繋がりか。
(3)定義の本性は何か。
このそれぞれに対する答えは次のようなものです。
(1')ロゴス
(2')イデア間の繋がり
(3')定義されるものはイデア(ないし共通本性)であるという「実在的定義」
問い(1)が問い(2)と密接に結びついていることを考えれば、プラトンにとっての論理学的な思考は(イデアに関係する)存在論的な思考と切り離せないものであることが理解されるでしょう。プラトンのこの思考は、形を変えてアリストテレスに受け継がれることになります。